第1章 worst world
その、フィオいわく「ランス」という男は、俺たちのところまで到達すると、すでに消えていたフィオに対して「ふざけろ!」と地団太を踏んだ。
「ったく……。ってあれ、あんたら誰? フィオの知り合い?」
「そんなことも目に入らない位にフィオ追いかけてたのか…」
ランスはフィオに対する愚痴を何度かこぼすと、雑に頭をかきながら俺たちに向いた。
「俺はランス・エドナー。あんたらは」
フィオとは打って変わって自ら名乗ると、ランスは面倒くさそうにそう聞いた。
「ユアン・メイ。ちなみに、フィオとは今日初めて会って、少し話してただけさ」
俺がそう言うと、ランスは驚いたように目を見開いた。
「フィオが初対面で名前教えるなんて…。明日この世は終わるのか…?」
「縁起でもねぇこと真顔で言うな」
ランスは「まぁ」と俺を見てニカっと笑い、手を出してきた。
「フィオが名前教えたって事は、悪い奴じゃ無いみたいだし、よろしくな!」
「基準はフィオかよ」
俺は合わせるようにして手を出して、ランスの手をとった。
「あの…」
唐突に、アルベロがゆっくりと手を挙げた。その動きにランスは「え…?」と微妙な顔をしている。
「アルベロおいてけぼりで寂しいです…。酷いです。ユアンは酷いです…」
スンスンと、わざとらしく無き真似をしてみせるアルベロを、ランスが訳が分からなそうにまじまじと見ている。
「ん…? えーっと、うん。ユアンの仲間だったんだな。てっきり最近流行りのストーカーかと」
「何でいちいちそうなるんですか?! 何でですか?! っていうか流行ってるんですか?!!」
「おぉ、よかったじゃねぇか、アルベロ。お前流行りに乗れてるみたいだな」
「乗れなくていいです!! っていうか! 私ストーカーじゃ無いですから!! ユアンまでそんな事言わないでくださいよ!!!」
アルベロが息を吐きながら「もう嫌です…。アルベロ泣きたくなってきました……」とブツブツ呟いている中、ランスは苦笑いで何度か謝っていた。