第1章 worst world
「はぁ…。アタシはフィオ。一回しか言わない」
「教える名前は無かったんじゃねぇのか。ってか姓は言わねーのかよ」
「うるせぇな」
少女―――フィオが言い終わると、アルベロが俺の横から少し前に出る。
「フィオ…ですね。私はアルベロです。わけあって、ユアンと一緒に旅をしています」
長い髪で見えずらい顔で、ニコッと笑ってみせるアルベロ。しかし、当のフィオの反応は非常に怪訝なものだった。
「あ、え? あぁ……。あんたら仲間だったんだ。てっきりそっちの女はストーカーかと」
「確かにそんな服装ですけど! 見えますけどそれは酷いです!! アルベロお二人に突っ込みとか一応してるんで! 存在抹消しないで下さい!!」
アルベロの「自分の存在意義について」を十分に聞かされると、フィオはかなり引き気味の顔でため息をついた。
「だったらもっと服装考えたらどーなの。そんな露出ほぼ0の服じゃ、見てるこっちだって暑いし」
「そういう訳にはいかないので、わざとこうしてるんですよ」
アルベロは自分の服装を下から見て「ま、確かにフィオの言う事も一理あるんですけど…」と少し不貞腐れた。
「…。そういえば、「わけあって」とか言ってたけど、何であんたらは旅を?」
アルベロを横目で見ながらフィオは俺に聞いた。
「あぁ…まぁ、それは―――」
「ああ!!! 見つけたフィオ!!」
俺が言いかけたところで、俺たちのかなり後ろの方から大きな声が聞こえた。
そちらに振り返ると、遠くに男が立っているのが目視出来た。
あまり整えられていないボサボサの茶髪。そこまで高くは無い身長。ラフにシャツを着こなしているのに、その後男は全速力でこちらに走って来た。シャツが台無しなぐらいに乱れている。
「ゲッ…ランス…」
それを見たフィオは顔を歪めて、一瞬でその場から消えるように走って逃げていく。
「おい!! 逃げんなよ!! おい!!!」