第1章 worst world
少女と都市軍の2人がにらみ合っている中、そいつらに聞こえない程度の大きさで、野次馬たちの声が聞こえてきた。
「都市軍の…しかも騎士にあんな態度で…」
「わたしゃ知らんよ…どうなっても」
「都市軍に関わるとろくなことが無い…」
野次馬の多くが苦い顔をして下に俯き、その場からいなくなろうか悩んでいるようにも見えた。
さっきの道端での表情はあんなに明るかったのに…。
「はぁ、早くどっか行ってくれない? アタシそんなに暇じゃないのよ」
都市軍を睨みつけて心底嫌そうに呟くと、少女は再び大きなため息を吐いた。
その時。
「っっ!! ……貴様…! 言わせておけば!!」
片方の都市軍が剣を抜いて、少女の胸に突きたてようと刃先を向ける。
予想もしていなかったのか、少女は驚いたように目を見開いている。
そして…。
「なっ…!」
「さすがにそれはやりすぎ。都市軍さんとやらも、そっちの女もな」
その剣先は少女の胸元には刺さらず、俺の指でピタリと止まっていた。
「お前…片手で…剣を…?!」
「ここの街の奴らも見てるんだし、ここは引いとけよ」
俺は剣先をつまんだまま都市軍を少し睨む。
「…! ご、ゴホンっ…。今日は止めておく。しかし、また来るぞ…」
最後に軽く捨て台詞を吐くと、もう1人の都市軍に「行くぞ!」と苛立ち気味に言い、スタスタと街の外の方へ歩いて行った。
「はぁったく…何なんだ? あの都市軍ってのは」
「知らずにユアンは行動してたんですか! 少しだけ感心してたのに!!」
「俺なんかに期待を持つお前が悪い。自信もって言える。俺に期待をするな」
「変なとこに自信を持たないでください!!」