第1章 worst world
ガツンっといかだが何かにぶつかった音がした。おそらく、目的地に着いたのだろう。
「あっ着きましたね!」
アルベロの指さすそのほうを見ると、レンガ造りの道が長く続く、市場のようなものが多く並ぶ、画期的な街が見えた。
「ここがグリセルの街か…」
いかだを降りて街中を歩いてみる。
ここに暮らす人々全員が、と言っても過言では無いほどの人たちが、活気にあふれ楽しそうに行きかっている。
「この街は元気ですねー。みんな楽しそうです」
「そうだな」
少し奥まで進むと、人だかりが見えてくる。どうやらそこは、広場か何かのようで、人と人の微量の隙間からは、噴水のような物が見える。
「なんだ? あの人だかり。またアルベロが騒ぎでも起こしたか?」
「酷いです!! アルベロはここにいます!! それに、いつも騒ぎを起こすのはユアンです!! 私は尻拭いをしているだけで……」
「ふざけるな!!」
不意に聞こえた図太い男の声に、俺とアルベロは会話を止める。
その声が聞こえたのは、どうやらあの人混みの中心部からのようだ。
「行きますか?」
「まぁな」
「クスっ…そう言うと思ってましたよ」
アルベロは笑うと、歩き始めた俺の後ろを着いてくる。
思っていたよりも多い野次馬たち。それらをかき分けて中心へと進んで行く。
「あぁ? んだよ。アタシ、何かあんたらにしたっけ」
何とか中心部へ出て聞こえた声は、先程の男の声ではなく、威勢のよさそうな女の声だった。
その声の方向へと顔を向ける。するとそこには、今の声の主であろう、ベンチに偉そうに座った少女と、その目の前に仁王立ちする男が2人居た。
「その口の聞き方だ!! 我々を誰だと思っている! 都市軍の騎士だぞ!!」
「あぁ残念。アタシそーいうの興味無いんでね。一々高飛車ぶってる奴にペコペコするつもりはねぇんだ。スミマセンネぇ、『都市軍』さんよぉ」
少女は挑発をしながら、自分の背中のすぐそばにある噴水の水を、遊ぶようにして触り始める。相手の『都市軍』とやらは、顔を真っ赤にしながらわなわなとふるえている。
「あぁあ…あんなフルボッコに言っちゃっててイイのかね」
「まぁ、私達が首を突っ込むところでは無いでしょうね。…今のところは…」