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罪深き河童よ(銀魂:桂夢)

第1章 罪深き河童よ




「と言う事があってだな、それ以来、定期的に顔を見に行っておるのだ。気にはなっていたのだが……もう臨月に入ってしまってな、どうしたものか。お前はどう思う、銀時?」

ズズズーッ、と新八に出された茶を汚らしく飲み干せば、桂は世間話のように数ヶ月前の出来事を話した。本来ならば客が来るかもしれない事務所でのんびりと犯罪者に過ごされては迷惑なのだが、もともと客入りが皆無に等しい万事屋にはその言い訳が使えなかった。更に、この天然テロリストを追い出すのには体力がいる。過去、穏便に奴を追い出せた経験はない為、警察さえ嗅ぎつけなければ好きにさせた方が良いとここ最近は学習したのである。

それでも万事屋オーナーの銀時は桂をとことん無視した。興味のない話ばかり持ちかけてくる旧友の相手は、子供達に任せているのである。どんなにシリアスな話題でも、まともな会話になる訳がなかった。事実、先ほど銀時に投げかけた問いは銀時ではなく、ノリの良い神楽によって答えられる。

「いっそのこと赤ちゃんと女を丸ごと誘拐すれば良いネ」

「リーダー、それはいけない! それではただの犯罪だ!」

「いや……そもそも桂さんテロリストじゃないですか。犯罪も何も、貴方はもう手遅れなんですから罪状が増えるくらい平気でしょ」

「新八君までっ! 見損なったぞ、それでも攘夷志士か!」

「なってません、勝手に仲間にしないでください。そもそも僕達もいい加減、聞き飽きたと言うかなんて言うか」

そう、桂はすでに女の話を幾度もした。もっと言えば、彼は週四回のペースで欠かさず女の様子を報告しに来ている。相談のような雑談のような話は、決して解決策を求めるような語り口ではなく、ただただ零せば満足して帰るような物だった。

しかし、銀時はとうの昔に違和感に気づいていた。もともと桂は面倒見の良い性分ではあるが、これほどまでに一つの話を引っ張るのは珍しい。問題があればすぐに行動して正したがるはずなのに、今回のアクションはかなり遅いように思う。女も臨月に入ったというのなら、いい加減に行動してもらいたい。このまま女の出産と子供の死亡報告を聞きたくはないのだから。
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