第3章 Battle3 まず、生活の基盤を整えよう
「あぁー、すみませーん。足が滑っちゃいましたぁー」
僕は、もらったばかりのミュールで浮気男の足を思いっきり踏んづける。
ヒールの先は細くないし、そんなに打撃にならないのが悔しいね。
「そうねー、足が滑ったならしょうがないですものねー。ホホホホ」
奥さんは、笑って手を振ってくれる。
別に、アンタのためにやったわけじゃない。
そっちの女の人のためなのに。
女の人は、泣いたまま顔を上げてくれない。
――駄目だったか。
僕は、ため息を付いた。
人生って、本当に上手くいかないな。
お気に入りのミュールも、同じものを買い直すことは不可能だし。
新しいミュールは気に入らないし。
行動は上手くいかなかったし。
――あぁ、僕は美しくない。
スマートにこなしたかった。