第20章 過去へ……
僕は、今現在五虎ちゃんと一緒に、団子屋さんを手伝ってる。
今日は、団子屋のおじさんが倒れちゃって、おばさんがお手伝いをお願いしてきたのさ。
まぁ、僕はお察しの通り、家事全般は壊滅的だから、五虎ちゃんが頑張ってる。
「そこの綺麗なお姉さん。今日ね、とっても可愛い職人さんが団子作ってるんだよ?」
「おや、本当かい?」
僕は、いつものとおり接客業。
こっちは、慣れてるから僕がするよ。
「二人共、ありがとうねぇ」
「いいんですよ」
そうそう、その代わりにお団子もらえるんだし。
* * *
そうして、夕方になった頃。
僕らは、お団子片手に伊達の城に帰った。
つい最近は、お行儀悪い食べ方が身にしみちゃって、治さなきゃなと思ってるんだけどね。
その帰り道、お店でチョコレートを見つけた。
南蛮菓子は高価だから、なかなか食べられない。
「これ、美味しいんですか?」
「――うん、とっても甘いんだよ。口の中に甘さが広がるの」
「うわぁ、いいなぁ……」
前世のギモーヴとか、ショコラとか、懐かしいなぁ。
全然ご無沙汰だから、チョコレート食べたい。
でも、お金はないし、諦めよう。
「お金がないから、また今度にしよう?」
「も、もうちょっとだけ……」
五虎ちゃんは、じっとそのお店の前から離れない。
チョコレート、気になるのかな?
紙から伝わってくる匂い。
美味しそうだもんね。
「どーしたの?」
「弟が、チョコレート食べたがってて」
「へぇー、南蛮菓子?」
「凄く、甘いんです。味を教えたら、動かなくなっちゃって」
ハッと横を見れば、武田軍の猿飛佐助。
「どーも」
ニコリ、と人の良さそうな笑顔を浮かべる。
「これ、二つくださいな」
「へぇ、まいどー」
「はい、お一つどうぞ。もう一つは、うちの旦那へのお土産だから」
「えぇっ、流石にこれは高いんで」
五虎ちゃんが、欲しそうに見つめる。
で、でもさ、一応武田軍に貸しを作るわけにはいかないよ?
「いいのいいの、いいお土産の情報もらったお礼ってワケで」
猿飛は、にこりと笑い、チョコレートを五虎ちゃんに握らせた。
そして……。
「かすがのこと、ありがとうね」
霧のように消えてしまったのだ。