第20章 過去へ……
僕は、かすがちゃんを探してた。
理由は、ただ一つ。
かすがちゃんに朝ご飯を食べさせるためだ。
まぁ、だからって伊達軍で食べさせるわけにもいかない。
だから、握り飯だけもらってきた。
――いや、自分で作ろうと思ったんだけど、ご飯は熱いし、塩のかけかたもわからないし。
必死に作ってるつもりなんだけど、「遊ぶなら、出ていきんしゃい!!」って怒られちゃって。
結局、作ってもらったんだ。
あーあ、こんなことならパソコンで調べればよかった。
「かすがちゃーん、かすがちゃーん」
「――姫鶴」
シュタっと降りてきた、かすがちゃん。
最初の頃は、まぁ伊達の命を狙ってたよ。
「朝ご飯」
「いつもすまないな」
「ううん、いいの」
この頃、かすがちゃんはご飯の時間になると、必ずここで待っててくれる。
本当は、五虎ちゃんも行くって言ってたけど、朝起きれなかったんだ。
「何故、謙信様は若き竜を守れと言い残したんだ?」
「――たぶん、見た目は美しくても、体の衰えには勝てなかったんだよ」
誰だって、いつか終わる時が来る。
僕ら刀剣は、例外だけどね。
そうなると、かすがちゃんともお別れの日がくる。
――なんだか、寂しく感じるな。
「――そうか。武田信玄が真田幸村に負けるように、謙信様もまた……」
「年には、勝てないってことだよ」
こうやって、世代交代は行われていく。
悲しいことだけど、仕方ないんだ。
だから、僕らはこうして、謙信様の意志を引き継ぐ。
今は亡き主の最後の願いだから。
いつか、いつか、かすがちゃんも伊達軍で寝起きできるまで、気持ちが回復すればいいのに。