第17章 和睦
「よかったねー、吸血鬼王。でもさー、女ってそういうことされると、もっと頭冷えるもんだよ」
僕は、くつくつと笑いながら吸血鬼王の近くに寄っていく。
相手は、明らかに挙動不審な顔になっているようだ。
「何だと……!?」
「や、めろ……、煽る、な……」
縋るような、ミカエルさんの声。
ルシファーは、動かない。
立ち位置からして、ミカエルを庇ったんだろう……。
「彼女の顔、よく見たら? エッチして、気持ちよさそうにしてる? 本当に、アンタって彼女のこと好きなの? ただ綺麗な"玩具"を侍らせて、喜んでるだけでしょ。そうでしょ?」
その言葉に、ピクリとウリエルが反応する。
「お主に、儂の何がわかる!」
「わぁーかりぃーませぇーん。だって、男ってすぐヤって解決しようとするもんね。無理やりヤられた女の気持ち、理解してる? ねぇ、今、好きな子笑ってる?」
「ゆるさ、ない……」
これはこれは、本人に動いてもらって、止めを刺したほうが早そうだ。
ウリエルさん、君は美しい。
だからこそ、身を守る"トゲ"を持たなくてはね?
「ウリエル様ー、貴方のナカに刺さってるモノ、何か理解してる? 貴方の近くにあるそのナイフ、何か理解してる?」
僕は、ウリエルさんが取りやすいように、ナイフを近くに落とす。
勢い良くそのナイフを掴んだウリエルさんは、焦って引き抜こうとする吸血鬼王の息子をしっかりとくわえこみ、そして……、そのまま一気に突き刺した。
「あああああああああああああああ!!!!」
吸血鬼王の無残な悲鳴が辺りに木霊する。
そのまま、蹲った吸血鬼王と、切り離された息子は、徐々に透明になり消えていった。
「あーあ、切られちゃった。でも、大好きな人の気持ちなんだもん。しっかり、受け取ろう、ね?」
くつくつと吸血鬼王を嘲笑いながら、僕は彼の消えるのを見送った。