第16章 審神者の帰還
どうやら、逃げ延びた数名の吸血鬼が、決死の思いでプレイヤーとなる吸血鬼を冒険に送り出すのがシナリオらしい。
そして、ここに居るサキュバスたちは、悪魔の奴隷として稼働しながらも、寝首を掻く準備をする。
それが、ストーリーだ。
「倶利伽羅、アンタは何か説明された?」
「いや、特に何も」
「そういやあ、インキュバスのほうは、悪魔を倒して同胞のサキュバス族を取り戻すとか言ってたな……」
「そう、ですか……」
どうやら、種族によってストーリーが追加されるらしい。
戦争に関わってない天使族は、どうやらそのせいでストーリーがないとか。
あぁ、それとエルフとビーストもストーリーはないんだってさ。
「インキュバスには、悪いことをしたと思っています。でも、こうしなければ……」
うっうっ、と女王は泣き崩れた。
側にいるサキュバスたちが、心配そうに女王に駆け寄る。
なんだか、ドラマを見てるみたいで不思議な感覚だ。
でも、たかがゲームでも彼らにとってはコレは『人生』なんだ。
他人の人生を救う勇者、という肩書が僕の背中に大きくのしかかる。
「お願いです、どうかルシファーを倒して下さい。サキュバス族も、全力でお手伝いします」
「――わかったよ」
僕らは、神妙な面持ちのまま、その場を去った。