第11章 Battle11 昔の僕と、今の僕
ため息が出る。
なんで、そんなヤツの名前を僕が貰わなきゃいけないんだろう?
あぁ、ヤダヤダ。
「――あれ、なんで、僕は大学に行くことになったの?」
「恵が行ってた学校だよ。見た目がそっくりだったから、そのまんま入れ替えたんだ」
どうやら、僕は辻褄合わせのために、柊 恵になったらしい。
「昔の恵に見つかったら、厄介なことなりそう……」
「そうでもないよ、名前は同じでも、今は見た目も違う」
「どういうこと?」
「姉ちゃん、自分は何歳だと思ってる?」
「三十路丁度っていう設定」
「残念、本物の恵は38歳。しかも、金もなくなったし、老化も酷かったなぁ。それに、姉ちゃんの見た目は20代の一番美しい頃から変わらないだろ?」
そういうことか。
弟が、やけに見た目に気を使えと色々なファッション雑誌を持ってきたり、美容器具を買ってきた。
それは、元恵への復讐の一貫かぁ。
なんか、複雑だなぁー。
まぁ、オシャレするのは嫌いじゃないから、いいけど。
それに、優ちゃんのおかげで、今の悠々自適なニート生活ができるわけだし。
「これで、隠してた事情は全部。別に、隠してるわけじゃないし、聞かれたらいつでも話す予定だったさ」
「すぐ話してほしかったなぁ」
「忙しかったから、ついつい忘れててさ。それに、言うと仲間を現実に引き入れるだろ?」
「駄目なの?」
「年が衰えない刀剣が、この世で悠々自適に生活するのは、あまりよくないんだ。政府は、そう思ってないみたいだけど」
「そっか、長く時間が経つと化物みたいに思われるからね」
「そういうこと。政府としては、刀剣のバカンスに丁度いいと思ってるみたいだけど」