第9章 Battle9 VRMMOだからこそ、伝わる温度差
「お前は、俺らの主ではない。主の主命により、仮の主になりすましているだけだ」
やっぱり、僕は彼らの主じゃない。
長谷部の取り繕ったような敬語の癖に、少々可笑しな部分を感じ始めていたのは、確かだ。
そして、皆『主であるはずなのに』何故か、命令は絶対ではない。
平気で、僕の持ち物も持って行く。
悪いとは言わない。
ただ、僕が知る彼らは、果たして主にそんなことをするのか?
彼らは、いくら役目に縛られているとは言え、審神者を主として大切に扱っていた。
僕の、答えは……、僕は、審神者じゃない一般人。
元主の友人とか、そこらへんの人間なんだろう。
「そう、なんだ。弟は、このことを知ってるの?」
「――もちろん。これは、弟様が主にお願いをし、お前に主命が下ったんだ」
「――じゃあ、僕は? 僕は、誰なの?」
「お前は、上杉の……」
「もう、いいじゃないか!!」
辺りを切り裂くように、鋭いみっちゃんの声が響き渡った。
何処か、切羽詰まったみっちゃんの表情。
そして、僕を殺すような勢いで睨みつける、倶利伽羅。
その、倶利伽羅の表情を見た時、僕は咄嗟に五虎ちゃんを守るように、後ろに隠した。
その時、何故か絶対近づけてはいけない。
そう、感じた。
今まで、あんなに仲良く接していたのに。
「やっぱり、やっぱり……、君は、僕を拒絶するんだね……?」
みっちゃんの雰囲気が一気に変わる。
次、目があった時のみっちゃんは、笑っていたものの、その表情に背筋が凍りつくような感じを覚える。
この二人、何かが可笑しい……。
そして、心の底から湧き上がる、この感情。
それは……、
憎悪。
僕とみっちゃんと大倶利伽羅。
この3人に間に、絶対何かがあったんだ。