第9章 Battle9 VRMMOだからこそ、伝わる温度差
けどそれは、明確に『いつ会った』というのは思い出せない。
どう考えても、会った記憶はない。
それなのに、五虎ちゃんがとっても懐かしいんだ。
心が弾んで軽いような、とっても温かい感じ。
それと同時に、何故かどうしようもない後ろめたさと後悔謝罪、そして『笑顔で居てほしい』という、強い願いが出てくる。
――最後の、笑顔で居て欲しい……。
これが、僕はとっても気になった。
自分のことなのに、まるで自分じゃないような感覚。
じぶんの状況がよくわからずに、僕は自然と五虎ちゃんを強く抱きしめた。
その時、はっと我に返る。
なんで、僕は自分を落ち着けようとして、五虎ちゃんを抱きしめるんだろう……?
僕は、僕は、人間の柊 恵だ。
幼い頃の記憶がなくとも、僕は柊 恵。
『姉ちゃん、記憶喪失になったんだよ。姉ちゃんの名前は、柊 恵。俺の姉ちゃんさ』
色白の幸薄そうな弟が、あの時そう言っていた。
彼が、そう言ったから言われるがままに大学に行き、今まで暮らしてきた。
――でも、それが嘘だったら?
何故か、僕の頭の中にあるピースがハマる音がした。