第9章 Battle9 VRMMOだからこそ、伝わる温度差
ちなみに、何故ヒーラーを増やしちゃいけないのかっていうのは、きちんと理由がある。
実は、対人ではもちろん、対モンスターでも狙われやすい職なんだ。
VRMMOだからこそ、モンスターも頭がよくなってるってこと。
まぁ、そういうことで、皆ヒーラーを守りながら戦わなきゃいけない。
だから、下手に増やすと、それだけ守る人数が増える。
その結果、PTが壊滅する確率も増える。
そういう理由もあって、ヒーラーを無意味に増やしちゃいけない。
だから、さっきチルちゃんが
「同じ職じゃ、一緒にパーティー組めない」
って言ってたでしょ?
VRMMOでは、1パーティーにヒーラーは1人っていう暗黙のルール? みたいな決まりがあるから、あんなに泣いたのさ。
まぁ、そういう暗黙のルールがあるにも関わらず、姉さんはパーティーに入ってこようとした。
だからこそ、ちょっと信用出来ないな、と思う面もありまして。
「準備ができました。さぁ、行きましょう」
嬉しそうに笑う一期さんに連れられて、僕はさっきの試験会場に戻る。
すると、そこには……、みっちゃんたちと一緒に、小さな子供たちもいた。
その中に、真っ白な小さな男の子が立ってる。
その、真っ白な男の子は、僕を見ると、頬を真っ赤に染めて、とても嬉しそうな笑顔で走り寄ってくる。
「ひいさまっ……!!」
何故か、五虎退を見た瞬間に懐かしさが込み上げてくる。
不思議な感覚は、彼を抱き上げて更に強くなった。
重さ、匂い、そして、五虎退のぬくもり。
全て、全て、鮮明に覚えてる。