第25章 距離
ー朱莉ー
「お前はさ、ほんとにアレで良かったの?」
「お前呼ばわりすんなって言ってるでしょ」
心配するように訊ねるちかには答えず、何度も口にしてきた言葉を返した。
「べに」
「……良いんだよ。距離を置きたいって思ったのは事実だし、もっといろんなこと、考えなくちゃいけなかったから」
納得してないような顔でハァ…と溜め息をこぼし、「わかった、もう聞かない」とポケットに手を突っ込んだ。
怒った、かな?
少しだけ不安になって横を見るとわしゃわしゃと掻き撫でられた私の赤い髪。
「怒ってないからそんな顔するなって」
「どんな顔よ……」
「叱られてる子犬みたいな顔」
言われた顔を脳内に連想させて、直ぐに有り得ないと頭を振った。
「そんな顔して無い」
「してた」
「してない」
「してた」
「してな」「してたっつーの。ばーか」
言い合いは家まで続いたとか続いてないとか