第25章 距離
そう、意気込んでみたものの、体育館の空気はいつもとさほど変わりなくヤル気と喧騒に満ち溢れていた。
いつもと違うのは大地と朱莉が会話をしてない。そのたったひとつだけ。
2人とも落ち込んだ雰囲気もギクシャクした様子も無く、今までも“そう”であったかのような……
「スガ!練習始めるぞ!」
「お、おう!今行く」
これで、いいのか? 本当に?
何が正解かなんて俺には分からないけど、問わずにはいられなかった。
その後も滞りなく練習は進み、自主練へと移行。
そう言えば、いつもこのタイミングで2人は「一緒に帰ろう」と声を掛け合ってたよな……
「ちか、一緒に帰ろう?」
「え……あ、うん。もうちょいかかるぞ?」
「いいよ、待ってる」
噂を知っていたらしい縁下は、チラリと視線を大地に向けてから了承した。
「スガ、一緒に帰んべ」
「おーもちろん!」
どうして、こんなに不自然なほど自然でいられるのだろうか。
それが不思議でならなかった。