第25章 距離
「菅原さん!!」
がちゃり、部室の扉を開くと慌てたように駆け寄ってくる日向と田中。
「大地さんとべにさん別れたって本当ですか!?」
ピクリと俺の肩が揺れる。
「それ、誰から……?」
「クラスの友達が噂してて……でも、そんなの嘘ですよね?」
「べにさんたちに聞いても何も答えてくれないし…」
語尾になるにつれて小さくなる声量。心配で心配で仕方無かったのだろう。
「大丈夫、別れてないよ。ただ、今は少しお互いの気持ちを整理しようとしてるんだ。だから今まで通り接してやってくれないか?」
できるだけ分かり易く話すと、それ以上は聞くまいと思ったのか2人顔を見合わせ大きく頷いて体育館へと向かった。
あの2人から噂はデマだと言うことが広まるだろう。
それが何処まで効力を持つか分からないけど、いい方向へ転んでくれることを願うしかない。
「今の俺の状況は傍から見たら好機なんだろうな……」
今がチャンスと思えるほど狡ければいいんだろうけど、お生憎、俺はそんな質じゃないからなぁ。
「さ、部活行くべ!」
今はふたりを支えてやらなくちゃ!