第25章 距離
いろんな意味で有名な2人。
その彼らがいつもと違うと周囲が気づくのは驚くほど早かった。
まだその日の授業が終わっていないうちに、『2人は別れたらしい』と噂が出回りだした。
「やっぱアイツ遊びだったんじゃね?」
「澤村の良心もついに限界を迎えたんだな。」
「道宮さんの方がいいって気づいたとか!」
真実とは程遠い噂たち。
心配する声もちらほら聞こえるけど、
やっぱり大半を占めるのは悪い噂。
本人達に聞こえようと聞こえまいと関係ないらしい。
朱莉の隣に立つ俺にも聞こえているのだから、彼女の耳にも大地の耳にも届いているのは間違いない。
それでも2人は凛とした表情を保ち帰りの支度を続けていた。
少しでも早くこの居心地の悪い空間から連れ出してあげたい。そんな思いで朱莉の傍らに立った。
「うわ、乗りえんのはっや。」
ボソッと呟かれた言葉。
振り返った先には女子の集団が朱莉を見ながらコソコソと話し始めた。
「勝手に言ってろ」
そう一言だけ女子の集団に返し、表情ひとつ変えないまま教室を後にした。
大地の姿はもう見当たらなかった。