第20章 コイビト
帰り道、いつものようにだいちに送って貰い
家には入らず、そのままちかの家に向かった。
「た、ただいまー。」
まだ慣れない言葉を口にして靴を脱ぐと迷うことなくちかの部屋に直行。
「ちかー、入るよー。」
ノックをしないのはいつもの事。ガチャリと扉を押せば、開き切ることなく押し返され扉が閉まった。
「ちか?」
「悪い。帰れ。」
温度の無い、低い声。
馬鹿だなぁ。帰る訳無いなんて知ってるくせに
「聞いたよ。だいちに怒ったんだってね。」
閉じられた扉に向かって優しく話しかける。
「何を言ったのかは教えてくれなかったけど、ありがとうって言ってたよ。」
返事は無いけときっと扉のすぐ向こうに座ってる。そんな気がする。
「ねぇちか。あたしね、だいちと付き合うことになったよ。」
君にはとても残酷な言葉かもしれないけど
「あたし今、すごく幸せだよ」
こころがね、ポカポカするの。
「あの時よりずっと。」
「ねぇちか。」
聞いてくれてるかな?
「ありがとう。」