第19章 二人の始まり
“1回フられたくらい”
確かに、たった1回ぽっちなのかもしれない。
でも俺にとっては一生一代をかけた告白だった訳で、生半可な気持ちじゃなかった。
「お前に俺の気持ちは分からないさ」
家族として傍に居られるお前にはきっと__
「じゃあ、、、大地さんにだって俺の気持ち分かんないですよッ!!!」
俺に怒鳴りかかった縁下が田中と西谷に抑えられた。いつもなら逆なのに。
「ずっと、ずっとずっと、、、あいつの事が好きなのに、、、家族としてしか居られない俺の気持ちなんか、、、」
悲痛な叫びだった。
怒りも悲しみも嫉妬心も全部詰まった叫び
恐らく誰にも、
1度も話さなかった“縁下の本音”
あの時縁下は、どんな気持ちで俺の背中を押したんだろう
どんな気持ちで朱莉の傍に居たんだろう
冷静さを失うくらい、朱莉のことが大切なはずなのに
自分では無く、他の誰かに託した
「あいつの話、、、ちゃんと聞いてやってください、、、」
落ち着いて、呼吸を整えながら縁下がそう呟いた。
「そしたらもっと、違った結末がある筈です」
俺にぺこりと頭を下げ、烏養コーチに今日は帰りますとだけ告げ、体育館を後にした。
縁下の出ていった体育館は
重く息苦しい空気が漂っていた。