第19章 二人の始まり
ー縁下ー
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
俺に抱き抱えられた朱莉を見て少し驚いた母さんは何も聞かずに「力の部屋に寝かせてあげなさい」とだけ言った。
泣き疲れて眠ってしまった朱莉をそっとベッドに下ろし、きつく締められた帯だけは外した。
髪の毛を纏める為に刺されたヘアピンを1本一本丁寧に抜いて、ヘアゴムも外して、綺麗な赤がサラリと広がった。
涙の痕が残る目尻を指先で撫で、サラサラな髪を指で梳いた。
俺がべにの事を何でも分かるみたいに、ベにも俺の事を何でも分かってるから、きっと俺が話を聞いていた事も分かってるんだろう。
けど、今日ひとつだけ俺の予想は裏切られた。
苦しげに吐き出された“ごめん”の言葉
俺が思っていたのよりもずっと、べにの中にある“過去の呪縛”は深く根付いているらしい。
「、、、ごめ、、、」
「っ、、、」
寝言と共に一筋の涙が閉じた瞳から零れ落ちた。
もう、謝んなくていいのに、、、。
「お前の中の“呪縛”は、、、いつになったら解けるんだろうな、、、。」
こんなに苦しんでるのに何もしてやれない事が情けなくて、ギュッと唇を噛み締めた。
神サマ、お願いだから
「もう、こいつを解放してやってくれよっ、、、」