第19章 二人の始まり
ー澤村ー
できるだけシンプルに、
でもちゃんと伝わるように
募りに募った気持ちを吐き出した
「朱莉、好きだ。」
不意を突くように言った言葉に朱莉は目を見開いた。
やっと、やっと伝えられた。
燻っていたこの気持ちを、やっと
好きだと口にしてからまだ10秒も経っていないのにもう10分くらい経ってるような気がして
返事を、と早る気持ちを抑え、朱莉の言葉を待った。
朱莉の口が遠慮がちに開いて、そして___
「、、、ごめん。」
聞こえてきたのは期待していた言葉とは正反対のもの。
“ごめん”
朱莉は確かにそう言った。
「そっ、か、、、。」
俺は自惚れすぎていたのかも知れない。
朱莉に好かれていると
周りが何故あれで付き合ってないんだと騒ぎ立てているのを聞いて、きっと大丈夫だろうと
縁下が言うならと
慢心していたのかも知れない。
「そっか、、、だよな。ヘンな事言ってごめんな!」
情けなさとツラさで思考回路が上手く働かない。
「あの、だいち「ほんとごめん。また明日!」っだいち」
朱莉が何か言いかけたのも遮って、
無理に笑顔作って
何でも無いように装って
ひどく泣きそうな顔をした朱莉に背を向け走った。
「だい、ち、、、」
朱莉の俺を呼ぶ声は届くこと無く暗闇に溶けて消えた。