第19章 二人の始まり
ー朱莉ー
気まずそうに視線を逸らすだいちはいつもより弱々しく見えた。
「付き合って無いよ」
そう返せば、え?っと驚いた様に私を見た。
「だから、付き合って無いよ。断った。」
「そうか、、、」
やっと言葉の意味を理解するとホッとしたように強ばった表情が崩れた。
なんで抱きしめられてたのかは聞かれずに済み、ほっと一息。
どちらからとも無く再び歩き始めて、気づけば家の近くまで来ていた。
「せっかくみんなで夏祭り来たのに台無しにしちゃったね、、、ごめん。」
半歩先を歩くだいちに声をかけた。
「朱莉が悪いわけじゃないだろ?気にするな」
優しい声が心地いい。
「ん、ありがと、、、」
あたしにだけ向けられた言葉
あたしだけの、特別な__
あたしの部屋の前に着いて、後ろを振り向いて
「送ってくれてありが、と、、、」
真剣な目をしただいちがそこにいて
『あ、家の鍵ちかのとこだ』
頭の隅っこで思い出した。
「朱莉、好きだ。」
完全に、油断していた。