第19章 二人の始まり
歩き始めて数分経つのに、さっき話して以来一言も交わしていない。
今までは心地良かったはずの沈黙が、ムシムシした空気と一緒に纏わり付いて息が苦しい。
「なあ。」
何の前触れもなくかけられた言葉にビクリと肩を震わせた。
「なに」
口の中が渇いて上手く言葉が出ない。
「お前、及川と付き合ってるのか?」
問い詰めるように低く、ほんの少し威圧感を含んだ聞き方だった。
「なん、で?」
「俺、見たんだ。及川が朱莉のこと、抱き締めてるの。わざとじゃ無かったんだ。」
ひとこと一言気を遣うように慎重に言葉を連ねていくだいち。
見られてたのか、、、
さっきまで一緒に居た及川の表情や言葉が鮮明に浮かび上がって胸が苦しくなった。