第19章 二人の始まり
ー朱莉ー
“べにちゃんも大概ウソツキだよね”
及川から言われた言葉が壊れたラジカセみたいに何回も頭の中に鳴り響く。
もういやだ。おねがい、ひとりにして。
もうだれも、きずつけたくないのに
ズキズキと痛む胸をぎゅっと抑えてベンチから立ち上がった。
「べにちゃ、「かえ、る」
絞り出した声は情けなく震えていて、いつものあたしを作る余裕が微塵もない。
~~♪~~♪
軽快なリズムの音楽が流れて、及川はケータイを取り出した。
「もしもし岩ちゃん?」
考えれば分かるはずの事だった。
“及川がケータイを持ってるかもしれない”って。どうして気づかなかったんだろう。
「かえるって言っといて」
誰に、とは言わずそれだけを告げ、及川に背を向け歩き出す。
「ちょ、待ってべにちゃんっ!」
足の痛みも気にせず小走りでその場から逃げた。
からんころん、下駄の音を響かせて丘からの階段を降りて少し開けた道に出ると
「あ、、、」
「無事でよかった、、、送るよ」
1番会いたくて、1番会いたくなかった彼に会ってしまった。
「だい、ち」
「ん、帰ろう」
胸が、ジリジリ焼けるように痛い。