第19章 二人の始まり
ー及川ー
やってしまった。
こんな事、するつもり無かったのに、
べにちゃんがあんまりにも泣きそうな顔をするもんだから、抑えが効かなかった。
触れた所から伝わる体温もドクドクと脈打つ心臓も、全て彼女の生きてる証。そう思うと、全てが愛おしくてたまらない。
このまま無理矢理にでもおれのモノに出来たら、、、
そんな邪まな考えがよぎったけれど、最後の1握りの理性で体を引き離した。
そんなんで彼女の本当の笑顔が見れるとは到底思えない。
だって君は
「澤村くんが好きなんでしょ?」
彼の隣にいる時が一番幸せそうなんだから。
「は、、、?なに、言ってんの。違うよ」
焦りを含んだ声は、肯定を意味する。
そうじゃなくても分かってるんだけどね。
「違くないでしょ?君は澤村くんの事が好きなんだ」
小さい子に言い聞かせるみたいにゆっくり言えば何かに怯えるみたいに首を振った。
「ちが、う、、、違う!あたしはっ!」
「俺は人のこと言える立場じゃないけどさ、べにちゃんも大概ウソツキだよね。」
するとこの世界から聞こえる音をすべてシャットアウトするみたいに耳を両手で塞いだ。
「いやだ、、、やめて、、、」
「いい加減、素直になりなよ。じゃないと、べにちゃんが可哀想だ。」
お願いだからもう自分を許してあげて。