第19章 二人の始まり
花火が空に打ち上がる度、観客たちの歓声が響く。
それとは反対に、あたしと及川の間には沈黙が流れていた。
及川、呆れたかな?
こんなヤツなんてって思ったかな?
自分で突き放したくせに、離れていってしまうのが怖くて何か言われる前に逃げ出してしまおうかなんて考える。
「ちょっべにちゃんっ!強く握りすぎだよ!!」
焦ったようにあたしの肩を掴んだ及川は少し落ち着きを取り戻したらしい。
及川のもう片方の手があたしの手に触れると、力の篭った拳をゆっくりと開かせた。
「ほら、手の平に爪痕残っちゃってる。」
いつの間にか握りしめていたらしい。
くっきりと付いた爪痕をなぞるように撫でる及川の手つきはバレーボールに触れる時のように優しい。
「そんなに見られたら及川さんだって照れちゃうよ」
必死に不器用な笑顔を浮かべて話す及川にまた心が抉られた。
「おいかわ、、、」
「そんな心配しないで?おれ平気だよ?」
説得力ないよ及川。
ぜんぜん平気そうな顔してない。
ごめん及川、ごめん。
伝えきれない謝罪が喉につまって苦しい。
あぁ、きっと今のあたしは相当見苦しい表情してるんだろうな。でもどうにも出来ないんだ。
苦しくて、泣きそうだよ。
「、、、そんな顔、しないでよ」
我慢、出来なくなっちゃったじゃん
消えてしまいそうな小さな声でそう言った及川は、
その逞しい腕で、あたしをぎゅっと抱きしめた。