第19章 二人の始まり
ー朱莉ー
及川との出会いは決して良いものではなかった。
初対面でいきなりナンパしてくるし、笑った顔は作りモノばかりだったしチャラかったし。
けど今日一緒に過ごした及川にその面影は無く、本当の彼を見せてくれた。
冗談でしょ、なんて言ったけどホントは分かってた。けど受け入れたくなかった。気づきたくなかった。
告白なんて、しないで欲しかった。
「ごめん、及川。」
及川はすごくいいやつだと思う。
容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能
おまけにコミュニケーション能力にも長けてる。
あたしじゃなくても彼の中身を見れくれる人なんてこの世に数え切れないほどいるだろう。
「及川とは、付き合えない」
だからあたしを選ばないで。
「なん、で、、、?」
「あたしじゃなくても及川にはもっといい人いるよ。」
在り来りなセリフしか出てこないけどさ、
「あたしは及川を幸せにできない。」
これは確かだから。
「それでも良いって言ったら?」
「あたしが駄目なの。」
そう言うとふぅーっと大きく息を吐き、空を見上げた。
「きっと断られるだろうとは思ってたけどさ、まさかそんな理由だとは思わなかった。」
いつもとの同じような口調なのに所々震えていて、私のせいなんだよなって、心が痛くなった。
「ごめん。」
「、、、謝んないでよ」
傷つけることしか出来ない自分を殺してしまいたいと思ったのは何度目だろうか。