第19章 二人の始まり
-及川-
きっと嫌だと言われるのは分かってた。
それでも聞いて欲しくて、本気でお願いされた事をべにちゃんが断れないのは何となく分かってたから、そこに漬け込んだ。
「おれね、べにちゃんがすきだよ。」
生まれて初めて俺からした告白。
次会えたら言おうって決めてた。
下手な前置きなんかしたら帰っちゃうかな?
もっと男らしいほうがいいかな?なんて頭の中で何回も何回も考えて、練習して。
いざ出た言葉は考えてたのよりずっとシンプルで情けなくて。
あ、この子の前では“作った俺”なんて存在できないんだって思い知った。
「ははっ、、、冗談、でしょ?」
「本気だよ?」
それくらい目を見ればべにちゃんなら分かるはずだよね?何で冗談にしようとするの。
「うそに、見える?」
そう言ってべにちゃんを見つめると、小さな声で見えないと呟いた。
「おれね、べにちゃんが作り物みたいな笑顔って言ってくれたの、すごく嬉しかったんだ。」
女の子たちはいつも俺に“理想の及川徹”を押し付けてきて、“本当の俺”なんて見てくれなかった。
けど、理想通りに演じればみんな喜んだし、カッコいいって言われるのも嫌じゃなかったから何となく続けてた。
演じるのを辞めたらもうイラナイって言われそうで怖かった。
そうしてるうちに、本当の俺が分かんなくなった。
岩ちゃんだけは気づいて叱ってくれたけど、それでも辞められなかった。