第18章 夏の終わり
母「うん。とっても似合ってる!」
そう言って着付けられた浴衣。
あたしからじゃよく見えないし、似合っているのかもわからない。
父「母さーん、俺見たいんだけど。」
母「夏祭りまで我慢しなさーい。」
縁「母さん俺はー?」
母「あんたもだめー。」
縁「チッ、、、」
母「聞こえてるわよぉー?」
ビックリするくらい優しい声なのに寒気がする程の怒りが篭っているように感じる。ちかママはだいち並に怒らせちゃいけないと心に深く刻み込んだ。
そんなちかママに、ちかパパもちかも諦めて扉の前から去っていった。
そんな期待するようなモンでもないだろうに。
母「当日はお化粧と髪のセットもしてあげるわね!」
「そんなしなくていいのに、、、」
母「だめよ!好きな人も来るんでしょ?ならとびっきり可愛くして行かないと!
それに、娘には可愛くなってもらいたいの。」
優しい笑顔を浮かべ、ちかママはあたしの頭を撫でた。
“娘”
その言葉にあたしは何かと弱い。
だけど、
「、、好きな人とかじゃない、もん、、」
あたしは素直じゃないから、、、
段々大きくなっている気持ちを隠すように
好きな人、という言葉を否定した。
「大事な、友達。」
自分に言い聞かせるように呟いたのは最早一種の呪いのよう。決して、解けてはいけない呪い。
その呪いで胸の奥がチクリと痛んだのはきっと気の所為だ。
母「、、そう、、、。」
帯を解きながら返事をしたちかママの声は少し寂しそうだった。
誰も居ないはずの扉の向こうで
ちかがその話を聞いていたことにあたしは気付かなかった。