第18章 夏の終わり
ー朱莉ー
「ばいばーい」
澤「おう。また明日な。」
あたしと歩いた道を引き返すだいち。
あの広い背中が少しずつ遠ざかっていく。
その様子を見るのはあまり好きじゃない。
置いて行かれるような気持ちになるから。
「お腹減った。」
家に入って着替えをしようとしたらケータイに電話がかかってきた。
「ちかママだ。」
電話に出るとちかママの優しい声が聞こえてきた。
『ご飯とかお風呂もう済ませた?』
「ううん。まだ。これからだよ。」
『じゃあこっちいらっしゃい!浴衣の見つけたから着付けしてあげる。』
「わかった。今行くね。」
『あああ、ちょっと待って!力迎えに行かすから!』
「いいよ、すぐだもん。」
『だめよ?朱莉は女の子なんだから。』
「、、分かった。」
『むくれないの。すぐに行かせるわ。待っててね』
「はぁーい。」
昔からちかママはあたしに優しくしてくれる。
一人になったあたしを育ててくれて、
大事にしてくれた。
あたしはお母さんを知らないけど、
お母さんが生きてたらこんな感じなのかなって思う。
縁「べにー。来たぞー。」
着替えを済ませて待機していたらお迎えがきた。
「ちかごめんねー?」
縁「母さんのご命令だからな。仕方ない。あとごめんじゃなくて?」
「ありがと。」
縁「ん、よくできました。」
「あたし年上。」
縁「べには手のかかる妹みたいなんだよ。」
「解せぬ。」
縁「いーから。大人しく大事にされとけよ。」
「んー。」
大事にされるのはなんだかくすぐったい気持ちになる。何年経ってもそれは抜けない。
「ちかママー来たよー」
マ「お帰り。朱莉。」
「た、ただいま、、、。」
この家に来ると本当の家族のように、当たり前に“お帰り”って言ってくれる。
パ「おお、朱莉。また大人っぽくなったな。」
ホントの娘みたいに心配して、会うたびに大人っぽくなったなって大きくて優しい手で頭を撫でてくれる。
あたしはこの家族が好きで好きでたまらない。