第18章 夏の終わり
もう定番となった呼びかけを朱莉にして、階段の下で降りてくるのを待つ。
朱莉を送るのは俺の役目。
「じゃーちか、後でちかんとこ行くねー」
縁「分かったわかった。」
縁下の朱莉への言葉遣いは雑だが、その中にも優しさがあるのを知っている。
長年の付き合いだからできる対応ってやつなんだろう。
俺には、できないこと、、、。
「だいち眉間の皺すごい。飛雄みたい。」
そう言われて初めて気づいた。
澤「すまん。ちょっと考え事してた。」
「ん。考え過ぎないよーにね」
澤「わかってるさ。」
お前の事考えてた、なんて言えたらどれだけ楽なんだろう。
「だいちも夏祭りは浴衣?」
澤「ん?あぁ、そのつもりだけど。」
「ふーん。」
澤「なんだよ聞いてきたくせに」
「浴衣着たらだいち絶対モテるだろーなーって。」
澤「俺なんかモテ無いよ」
「へぇー」
そう言って興味無さそうに足元の石ころをカツカツと蹴っていたけど、俺にしてみれば朱莉の浴衣姿を見て狙う輩が現れるんじゃないかと気が気でない。
それと、俺も少しは自惚れてもいいのだろうか。