第18章 夏の終わり
「まだまだあちーねぇ」
澤「そうだな」
あの日から俺達の“いつもの”になったアイスを半分こしてかじりながら歩く。
「あ、ねぇだいち。夏祭りだって。」
澤「あー、もうそんな時期か」
地域の掲示板に貼られたポスターを見つけ、2人でそれを見た。
夏の終わりの頃にある地域の夏祭り。
それなりに規模が大きくて、夜になると花火も打ち上げられる。
澤「バレー部は毎年みんなで行ってたんだよ。」
「今年も行く?」
澤「あぁ、明日話してみんべ。」
「! やった!!」
澤「そんなに楽しみなのか?」
「まーね!」
僅かな表情の変化からだいぶ楽しみにしているのが分かった。
澤「みんなが駄目だったら2人で行こうな。」
そうは言ったけど、きっとみんな来ることだろう。
けどこの時、優しく微笑みながら「うん。」と頷いた朱莉がとても可愛らしくて
本当にみんな来れなくなってしまえばいいのに。
なんて、汚く濁った感情が邪魔をする。
澤「最低だな、おれ。」
「ん?何か言った?」
澤「いや、何も。」
1度出てしまった想いはまるで水に一滴墨を垂らしたみたいに、広がって薄くなるだけで消えてはくれない。
澤「暗くなる前に帰るぞ。」
「うん。」
そんな俺を知ったら、朱莉はどう思うだろうか。