第16章 お肉争奪戦
そう言えば名前を聞いていなかったなと思ったが、それよりもあの重いカゴをあの細い腕で持てたかどうかが心配になった。
きっと戻っては来ないだろう。用も済んだことだし帰ろうと出口へ向かえば肩に大量の荷物を抱えた先ほどの女がいた。
牛「何をしている」
最初の時と同じ言葉で訊けば、気まずそうに視線をそらしながら「ありがとう」とはっきりいった。
恐らくかごを持ってやったことだろうが、それはシューズの件で既に済んだこと。
わざわざ言うまでもないと思ったので「あぁ」とだけ返せば足早に店から出た。
まだだ__
何かに突き動かされたように女の後を追って腕を掴んだ。
牛「お前は、、、お前の名前は、なんと言う。」
自分でも驚いた。何をしているんだと訊かれたら答えられないだろう。
「逃げない、から、手放して、、、?」
少し怯えたように言われ、仕方なく手を放せば今日俺に見せた影のある笑いではなく
ちいさく花が綻んだような笑顔を見せた。
「あたしは紅林朱莉。烏野バレー部のマネージャー。春高ではウチが勝つからよろしくね?牛島クン。」
紅林朱莉と名乗った女はひらりと手を振って俺の前から去って行った。
牛「クレバヤシ アカリ」
やはり不思議な女だ。