第16章 お肉争奪戦
ー牛島ー
不思議な女と会った。
赤い髪をして、ほとんど表情の変わらない女。
困っていたようだから少し手助けをして、それで終わるはずだった。
だが気がつけば行動を共にしていて、挙句俺のシューズを選ばせていた。
俺の“脚”となる大切なシューズを。
たかがマネージャーに何が分かる、そう思っていたのにその女が選んだシューズは今までで一番のものだった。
不思議だ。何もかもが。
牛「お前は変わっているな」
そう言えば「俺に言われたくない」と返し、「俺の方が変わっている」と言う。
どこがだ、と問えばどこか影のある笑いをして
「だって、あたしを普通に受け入れてるし」
そう言った。
牛「何かおかしいか」
「だって、こんな形(ナリ)した女とか普通の人なら関わりたがらないよ。」
自分の髪を摘み、自嘲気味にそう言ったが、俺はそうは思わなかった。
牛「俺のチームにもお前の様な髪色をした男がいるからな。特に何も思わん。」
同情した訳でも嘘をついた訳でも無く、ただ事実を述べただけだった。それに、俺は人間の見た目なんぞに興味はない。
バレーにおいては別だが。
だが女は「そっか、、、」とまた影のある笑いをしてカゴを持って会計へと向かってしまった。