第14章 必殺技
「孤爪、どうかした?」
あたしのシャツを掴んだきり目線はずっと床に注がれている。おいなんか喋れーぃ。
「孤爪?」
孤「ぁ、、、あり、がと。」
小さく紡がれた言葉は身に覚えのない感謝。
「あたし何もしてないよ?」
孤「クロの、怪我。」
「あー、なんだそれか。あたしマネージャーなんだし当然だって。」
孤「クロは、変な所で意地っ張りで、いつもあぁなったら止められないから、、、」
つまり、あーなったクロを止められた事は通常の音駒からしたらある意味キセキ的な出来事って訳ですか。
「まー、あんな強引な感じだったけどね、、、」
孤「それでも、、、」
ずっと床に注がれていた視線は恥ずかしげに一瞬だけあたしの目を捉えて
孤「ありがとう。」
そう言ってあたしの横を通り過ぎようとした。
「どういたしまして。孤爪。」
その背中に言葉をかけるとピタッと足を止め、垂れていた長い前髪の隙間からこちらを見て
孤「研磨でいい。、、、俺、敬語好きじゃないからちゃんと使えないし、嫌いだろうけど、その、、、」
敬遠されていたはずの孤爪から、あたしを受け入れる言葉が聞けるなんて思ってもいなかった。
「うん。いいよ、研磨。分かってる。お前のこと嫌いじゃないよ。」
恥ずかしそうにそそくさと体育館を出ていった研磨はあたしなんかの数十倍は可愛らしかった。