第13章 黒尾
黒「?好きなら付き合いたいとか思わねーの?」
「普通の人なら思うだろうね。けどあたしは付き合いたいとは思わない。」
黒「なんで?」
しつこいって思われるかもしんねーけど、ただ純粋にもっと彼女のことが知りたかった。
「あたしじゃ、その人を幸せにできないから。」
振り向いたべにちゃんはまるで雪みたいに触れたら溶けてなくなってしまいそうなほど儚くて、名前を呼ぶことすら躊躇われた。
不器用なくせに下手くそな作り笑い浮かべやがって。
作り笑い嫌いなんじゃなかったのかよ。
なんでそんなに哀しそうなんだよ。
なんでそんな、何もかも諦めてるってツラしてんだよ。
お前の隣にいるアイツはいつも幸せそうな顔をしていた。
お前がいなくなったって聞けば誰よりも心配して、見つかったって聞けば泣きそうな顔をして
誰よりもお前を大切に思っているのに。
それなのに何故、『幸せにできない』なんてこと言うんだ。
「戻ろう。」
その一言から“これ以上聞くな”と言う思いが滲み出ていて、べにちゃんが何を考えているのかは分からないままだった。