第13章 黒尾
ー黒尾ー
猫「それじゃあ黒尾を見てやってくれ。」
監督に頼まれたべにちゃんが俺のジャージとタオルを持って隣に並んだ。
「分かりました。」
さっきまで猫又監督と気まずかったくせにもう切り替えてやがる。
「クロ、歩ける?」
いつもより優しい口調に胸が小さく高鳴る。
黒「よゆ。」
体育館を出ると照りつける太陽の日差しに気が滅入りそうになった。
さっきあんな事を言われたせいか二人の間には会話なんてものはなく、短いはずの保健室までの道のりはやけに長く感じた。
誰もいない保健室の椅子に腰掛け、渡されたタオルを頭にかけた。
「クロ、打撲してないか見たいから上のシャツ脱いで。」
恥じらいも何も感じられない言葉に澤村から前に聞いた話を思い出し、あいつもこんな感じだったのかと苦笑いした。
シャツを脱ごうと裾に手をかけるとぶつかった箇所がズキッと痛んで、顔を顰めた。
「やっぱり痛いんじゃん。」
小さな変化に気づいてくれることが嬉しかった。
黒「うっせ。」
「脱げそう?」
黒「よゆーだっッ、、、!!!」
正直、動かすのも躊躇われた。
けど脱がなきゃなんねえ。
「無理っぽいね、、、。仕方ない。ごめんよ。」
そう謝ったべにちゃんは何を思ったのか俺のシャツの裾から手を入れた。