第13章 黒尾
猫「君は選手と打ち解けている様だが、いつもどこか一線引いている。
なぜ彼らを信じ切れない、なぜ彼らを頼らない。」
尋ねているようでいて、どこか責めているような言葉。
「あたしはイラナイ子です。今までずっと、存在意義を否定され続けていました。信じれば裏切られ、頑張っても認められず、厄介者扱いされて来ました。
これ以上あたしは何も失いたくない。だから何もいりません。」
深くまで繋がってしまえば手放せなくなる。
だから踏み込みたくないし踏み込ませたくない。
今あるものはいずれ手放す日が来る。
覚悟はしているつもりだ。
ピーーーッ
「試合終わりましたね。スコア途中から曖昧ですが大丈夫だとは思います。」
ボトルとタオルをさっと渡して体育館から出た。
一刻も早く猫又監督から離れたかった。
さっきのあたしの言葉を否定したいと心が泣いているようだ。
胸がチクチクと痛い。
心臓の辺りをギュッと掴むと頭に大きな手が乗せられた。
黒「うちの監督が何言ったか知らねーけど気にすんな。」
「っへー、き」
黒「ん、無理すんなよ。」
それだけ言うと監督の元へ挨拶に行った。
その優しさが、あたしにはつらい。