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カナリアの囁き

第2章 phase2 慟哭


「……紗栄子ちゃん…?」

「…爽さん…私…私は…」

「どこに行ってんだ…心配しないとでも思ったのか?」

「すみません…自分の理解力では現状が理解出来なくて…」

「良いんだ…もうどこにも行くな…
僕のそばにいてくれ…」

「爽さん…」

何の根拠も行動もできない。
だが、僕はこのまま彼女を放って置くことはできなかった。

「家族を殺し、友人を殺している自分の姿が頭の中にあるのです。
別の私、もう一つ人格ができたような…」

しっかりと彼女の血塗れで血なまぐさい手を握り締め、もう話さないと言わんばかりだった。

「まずは家においで。
今日は母さんはいないし、2人でこの街を出よう。」

その瞬間、彼女の目が僕を見つめて涙を流し始めた。

「爽さん…ごめんなさい…」

「謝らなくていい。
僕が君を守ってみせる。」

そう言って彼女の手を引き家まで連れていった。
彼女をまず風呂に入れる事が最優先と考え、帰るなり風呂のお湯を沸かした。

「ごめんなさい…無理やりこんな形に…」

「気にすることないよ。
それより、今は人格が裏返ることはないの?」

「えぇ。不良など、この世に必要ないと判断された人物、物の前だと変身してしまうらしいのです。」

「じゃあ僕もそうなりかねないと。」

「いえ、それは無いですよ。」

静かに彼女がつぶやいた。

「だって、あなたは私の大切な人なのですもの。
例えシステムがどう判断しようと、私が許しません。」

いつもの紗栄子ちゃんの調子に戻ってきて少しほっとしていた自分がいた。
シャワーが流れる音が耳に入ってくる。
そんなものを他所に僕は荷物をカバンに詰め始める。
自分のは少なくていい。
彼女も着られるようなものを多くカバンに詰める。
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