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カナリアの囁き

第2章 phase2 慟哭


「お風呂ありがとうございます。
爽さんも入りますか?」

「いや、1回紗栄子ちゃんの家にも行かなきゃだからね。」

時間はもう10時を回っていた。
母には申し訳ないが、僕は紗栄子ちゃんの手を引き家のカギを閉めて出て行った。

「爽さん…大丈夫ですか?」

「何が?」

「いえ、色々と…これからの事とか…」

「…大丈夫。君は僕が守るから。」

そう言って抱きしめると紗栄子ちゃんもギュッと抱き返してくる。

「さて、こんなことをしている場合じゃありませんね。
早くここの区から出ないと。」

「南方橋の方から抜けるのがいいね。」

「あっちはもうひとっこ1人いないから確かに良いかも知れませんね。」

その声色に少し異変を感じ、僕はまた人格が入れ替わったと感じた。

「君は何の為に紗栄子ちゃんの体を使うんだ。」

「決まってるじゃないですか。この身体
、すっごく私の理想の状態なんですよ。
その為なら女の人でも構わない。」

手は繋いだままだった。
だが、腕から首筋にかけてあの触手がどんどん上り詰めて来るのがわかった。

「ま、何より私の同族もしばらくの間は動き回れるようですし、私は身を潜めてますよ。」

「……君は何の為に紗栄子ちゃんに…」

「まさか、ほんとに旧文明の影響とか考えてるんですか?」

その言葉に少し驚嘆し、同時に疑問が湧いてきた。
ならば本当に所謂二重人格だというのだろうか。

「真相は本人から聞いた方がいいでしょう。
私はここまでしか言わないので。
ただ、あなたがもし汚いと感じれば、あの子がどう思おうが私はあなたを殺しますので。」

そういう頃には触手が首に巻き付いていた。

「…あぁ。」

「それでは、またいずれか…」

次の瞬間には目をパチリとさせ紗栄子ちゃんが僕を見ていた。

「あの…私また…」

「大丈夫、人は殺してない。」

それから少し事情を話した。
彼女が言っていた旧文明の影響ではない可能性もすべて。

「そうでしたか…すみません。」

「良いんだ。ただ、本当に最近何か無かったかなって思って。
僕の司れない所で何か問題でもあったかなって。」

「…いいえ…特にはないはずなのですが。」

ただ、その顔は何かあり気な表情だった。
もうしばらくしてからでいい、彼女の話したいタイミングで聞けばと思い、近くのコンビニに入り、ご飯を買おうとした。
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