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カナリアの囁き

第1章 phase1 独唱


僕らは待ち合わせ場所によって放課後行く場所を決めている。
校門前であれば斧原家まで送っていく。
教室であれば近場のファミレスでお茶。
そして今日のような公園であれば…

「今日は誰もいないの?」

「えぇ、姉さんも学校ですし、父も母も仕事なので。」

そう。斧原家におじゃまするのだ。
僕らが知り合ったのはつい2年前。
近場に母の友人が引っ越してきたというものだから、その荷物を届けに向かった時だった。
その時、僕らは出会って、同じ中学に進み、同じ高校を受けた。
実際、紗栄子ちゃんならもう少し上の学校に行けた気がするのだが、なんだかんだとケチをつけて近場の僕と同じ学校に通うようになったのだ。

「だからと言って、爽さんに淫猥な行為をさせる為に誘っているのではありませんからね。」

少しくらい照れながら言ってもいいのではないかと思うが、これが彼女なのだ。
僕が愛して止まない斧原紗栄子なのだ。

「さて、家に着いたところで、一つ約束していただきたいことがあります。」

「何があっても紗栄子ちゃんからを除いて触らない。分かってるよ。」

「…わかってませんね。そのルールは今日を持って廃止です。」

「……もしかして呼吸もしちゃいけないとか…」

「ほんとに、爽さんも相当の悪童ですね。違います。
別に今日からは爽さんから触っても構いません。」

「えっ…」

「ただし。」

そう言って家の中に入ると、彼女は急に制服を脱ぎ始めた。

「ちょ!ちょっと!いくら人がいないからって!!」

「黙って下さい!!」

鋭い声で言われた為、黙らざるを得なかった。
彼女がゆっくりブラウスを脱ぎ去ると、背中になにか紋章が刻まれているのが分かった。

「…これがなんの紋章だか、わかりますか?」

「いや…それは…」

「これは旧時代に設定された英雄として選ばれたものに浮かぶ紋章のようです。
逸話や作り話かもしれませんが、事によっては後1人、いるらしいのです。」

「その、英雄に選ばれた人が、もう1人…」

「えぇ、まぁその伝説とやらも今から16世紀前の話らしいので、どうかはわかりませんがね。」
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