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カナリアの囁き

第1章 phase1 独唱


そう言って手を振り教室を出ると少し前からガタイの良い3人の生徒が歩いてきた。
この廊下を歩いているということは1年生であろう。

「おいわれぇ。最近斧原さんに近づいとるようじゃねぇか。」

「は、はぁ…」

「おんどれ、調子に乗るのも大概にせいよ!!」

いつの時代のヤンキーだよとか思いながら殴りかかってきた1人をしゃがんでよけて、反動で前のめりになったすきに足をすくった。

「おっと、危ないよ。」

「貴様ぁ!!」

次に来る男の拳も受け流し肘を眉間に埋め込む。
最後の男は覆いかぶさってきたのでそのまま一本背負いで男の山の頂上に叩きつけた。

「はぁ。もうこれで何回目なんですか。
僕と紗栄子ちゃんはそんな関係じゃないと言っているのに…」

「やかましい!俺はお前が気に食わのじゃ!!」

「とにかく、もうゴメンなので。
危うくピアスも取れそうだったし。」

そう言って自教室に戻り、席に付く。
こんな喧嘩ごとを毎度繰り広げているから僕は教師にもクラスの人にもたまに迷惑がられる。

その日はそのまま何事もなく放課後になり、約束の公園に向かった。
まだ紗栄子ちゃんは来ておらず、怒られることは今回は無いだろうと思っていた。

「30秒。珍しいですね。」

「わっ!!いるなら見えやすいところにいてよ。」

「だって、日差しが暑かったので遊具の陰に隠れていたっていいじゃないですか。」

「はぁ。まぁいいけど、どうして紗栄子ちゃんそんなに早く移動できるわけよ。」

「それは今日の夜まで秘密です。」

木漏れ日の中で長い髪を振りながら僕に振り向いた彼女はとても魅力的で、秘密めいたものがもっとあるのではと思ってしまうほどであった。

「まぁいいや。
取り敢えず行こうか。」

「はい。」
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