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カナリアの囁き

第1章 phase1 独唱


「霧咲、また斧原が呼んでるぞ。」

「あぁ、今行くよ。」

霧咲爽
僕の名前。

ただ、下の名前で呼ばれることは少なく、いつも霧咲と呼ばれている。
大抵言われることが、霧のように咲いている花のようだから。
咲いているとはいえ、僕は男だから、多少の違和感はあったが、印象的にはまぁいい方だった。

「紗栄子ちゃん、お待たせ。
どうかした?」

本をパタンと閉じて彼女、斧原紗栄子は僕の事を睨み返した。

「2分も遅刻しておいてその態度ですか、爽さん。」

「ご、ごめんなさい。
飲み物を買うのに並んでしまっていて。」

良く理解して欲しい。
僕は2年で紗栄子ちゃんの教室、すなわちここは1年の教室なのだ。

「はぁ…それで、やる事はやってきたのですか。」

「うん。課題は全部終わったよ。
で、用って?」

「えぇ、今日の授業で出た範囲なのですが、1度教えていただきたくてですね。」

と、出してきたのは国語の教科書だった。
僕は文系は得意だが、理系はさっぱり息をしていないのだ。

「あぁ、漢文か。
これは基礎の知識の応用だから、まずはそっちを片付けた方がいいよ。」

と、ペラリとページを戻してみると付箋が貼ってあった。

『今日の放課後、公園で待ち合わせしましょう。』

それを見て彼女の表情を次に見ると、唇に人差し指を当て少し意味深な笑みを浮かべていた。

「さて、教えていただけるところはここまでになりますね。
ありがとうございます。」

「あぁ、分かった。
じゃあ僕は戻るよ。」
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