第1章 互
「……何故か、問うても良いか?」
「そんな求められ方、嫌よ。もう付き合うのに疲れた」
「そうか、そうだな。お前は十分この戦いに付き合ってくれた。これからは女子(おなご)として生きたいのでだろう。少し残念ではあるが、幸せになるのだぞ」
少し考えれば察せる事だった。剣の腕が立つからと言って、戦いに身を興じたい女など存在するはずがないのだ。幼少からの付き合いだからこそ自分の気持ちを理解してくれ、付き合ってくれると傲慢にも勘違いをしていた。彼女の気持ちを蔑ろにしていた己に、桂は腹が立った。美穂を思えば、一緒に来てもらう事さえ愚かな誘いである。
そうして気持ちに区切りをつけた桂は、美穂との別れをあっさり迎える。幕府を倒す目標が出来た今、行動は早く進めなければならない。否と答えた美穂は置いて行き、桂は新たな同志を集める旅へ出た。このまま順調に己の道を歩めば、もう二度と彼女と運命が交わる事はないであろう。
片や己は世の犯罪者。堅気の世界で女人としての人生を謳歌している美穂とは、二度と会う事はない……はずだった。