第8章 少しだけ震えた彼の肩
今までフワフワしていた思考回路が、一気に冷めた気がした。
持っていたグラスをテーブルに置いて、総悟くんの顔を見つめる。彼は、吹っ切れたような表情をしていた。
「……すいやせんでした」
「えっ?」
「土方さんから全部聞いたんでィ。俺の態度が美和さんを傷付けてたって……。一言だけ伝えたくて来やした」
総悟くんは、こっちへゆっくり歩いてくる。立ち上がっていた新八くんが慌てて道を開けた。
「俺は、貴方が好きです」
ゴツッ、といい音が坂田さんの方からしたが、確認する余裕なんてなかった。頭の中を、総悟くんの言葉が回る。
「良い友に____なれれば良いと思いやす。貴方がいいんでさぁ。他の誰でも____姉上でもなく____、美和さんがいい」
それだけ言うと、失礼します、と店を出て行った。私は口をぽかんと開けている。それは私だけではなく、この店に入る人間全員のようだが____
私は、どうやら、
「あはは……」
愛されていたようだ。