第8章 少しだけ震えた彼の肩
「……私、愛されることなんてないって思ってたんです」
「……美和?」
「昔から、私は____他人の愛なんて知らなかったから。だから、今日…総悟くんが私のことを友愛しているって聞いた時、すごく嬉しかった」
____私は、ここにいてもいいんだって思えたから。
新八くんはとっくに家に帰った。もう夜も更けている。一応自宅まで送ってくれるという坂田さんに、私はぽつりと本音を零した。
「……気に食わねェ」
「え?……わっ、」
「俺はお前のこと____ちゃんと愛してるよ」
「……さか、た、さ」
ぐい、と。
坂田さんは私の手を引いて、彼の腕の中に私を閉じ込めた。ややお酒臭い、暖かい温もり。激しく動く心臓を押さえつけるのもできず、私は彼に身を任せた。
するといきなり、彼は私を抱えるように持ち上げ、私の家にズカズカと入り込む。寝室に引きっぱなしだった布団の上に、私の身体を優しく下ろした。
「ちょっ、坂田さん……!」
私が驚いて上半身を起こそうとすれば、腰紐を手早く解いた彼が上に覆い被さってくる。
「教えてやるよ。一晩かけて、じっくりとな」
もう、流されてもいいのかも、しれない。
降ってくる口づけを、私は目を閉じて受け入れた。
そして、私と坂田さんはその夜、一つになった。