第8章 少しだけ震えた彼の肩
「ちょ、ちょっと美和さん、飲みすぎじゃないですか…?」
「大丈夫だよォ新八くん。私坂田さんと違ってお酒強いから……お登勢さァん、鬼嫁もう一杯」
「いや酔ってるだろ!自覚なしかよ!!なんとか言って下さいよ銀さん…」
「お、おぇええー……」
「お前はもう吐いとるんかィィィ!!」
この状況を一言で言えば____ヤケ酒、である。
悲しいを通り越して自分に怒りが湧いてきた私は、むしゃくしゃした気分を晴らすために暴飲暴食に走ろうとしたのだが、同じことを思っている男がもう一人いたのだ。
パチンコで大損したらしい坂田さんは、私と同じくらいのハイペースで飲みまくり、今は吐き気と戦っているらしい。弱いくせに飲み過ぎ。横目で彼のことを見てからまた酒を煽る。時刻はまだ9時くらいだ。
ちなみに神楽ちゃんは、そよ姫とのお泊まり会があるらしく、早々に退場してお城へ向かっていた。
「で、なんだってそんなイライラしてんだい?」
「なんか私、ずっと勘違いしていたみたいなんですよねェ〜〜……。なんか調子乗ってた自分が恥ずかしかったってゆうかァ」
「え、勘違いってどういうことですか?」
話に食いついてくる新八くんとお登勢さん。坂田さんは意外と静かだ。
私が愛されないのなんて、昔からずっとのことだったのに____この街に来てから、なにか勘違いしていたらしい。総悟くんに限ったことではない、私は誰にも____
そんなことは、わかっていたはずなのに。
「美和さん!」
ガラガラ、と引き戸を勢いよく開ける音が響き、私たち全員、そこに目をやった。
「総悟くん……?」