第11章 夢ならばここで終わらせて
私は、地球ではない、どこか辺境の星で生まれた。私は天人と人間の間の子として、この世界に産み落とされたわけであるが____
私の母は人間であった。そして、遊女だった。生まれた瞬間に、仕事の邪魔になる私を父に押し付け、夜の仕事へ戻っていったという。
父は多忙な人だった。私を本来の妻に預けて、単身宇宙を飛び歩いた。きっとその中でできた肉体関係は数知れないだろう。それで不幸になった人々の数も、きっと____
そして私も、その一人だった。
「あ、あの、ごめんなさい。使用人さん。わたし、おさらを……」
「あら!お怪我はありませんか?すぐ片付けますので、お嬢様はお部屋に」
「あんた、皿なんて割ったの?」
「違うわよ、私じゃないわ。あの猿の仕業よ、全く。存在していること自体、奥様と旦那様に迷惑なのに____どうしてこうも余計なことしてくれるのかしら」
たしかそれは、5歳の時だった。
使用人の人が仕事をしているのを見て、自分が手伝えばもしかしたら仲良くなれるかもしれない。私を必要としてくれるかもしれない。
そう考えた私は、一人の食事を終えた後、食器を流しに持って行き、見よう見まねで食器洗いを始めたが、誤って皿を割ってしまったのだ。
戻ってきた使用人に正直に言えば、にっこりと笑って許してくれた。もう余計なことはするまいと自室に帰ろうとしたのだが、やはり諦めきれず、片付けだけでも手伝おうと思い、食堂に入ろうとすれば____
聞こえてきたのは、心ない会話だった。
私がなにをしたのだろうか。私は何か彼女たちに迷惑をかけたのだろうか。
その時の私はそれがどうしても分からずに、部屋に閉じこもり考えた。そして、全く私に寄り付かなかった義母が珍しく私の部屋の前を通った時、私は彼女の腕にしがみついて尋ねたのだ。
「わたしは、なにかわるいことをしましたか、お母様」
「そんなの、決まってるじゃない。あなたは何もしてないわ」
そういうと彼女は、私を思い切り振りはらい、倒れる私を汚いものでも見るかのような目で睨みつけた。
「貴方の存在自体が”わるいこと”なの。どうしてこの私が、地球人のような猿なんかの親にならなきゃいけないのよ」
久しぶりに聞いた母の声は、とてもとても冷たく、そして鋭利だった。