第6章 こんな想いは初めてで
もう、どうすればいいのだろう。
私が攘夷浪士に捕まって助けてもらった日から、もう数日間経過しているが____……私は、坂田さんとまともに顔を合わせていない。
あの時の言葉や、キスを、彼は覚えていないと言う。そんなもの、私だけが覚えていたって、何も意味などない。悲しかったのだ、私はただ。
____坂田さんに惹かれていた。焦がれていた。
出逢いは最悪で、鳩尾に膝蹴りをかました事もある。でも、周りの人を気遣う優しさや、何も考えてないように見えて実は色々なものをよく見ている事、そして、あの時、助けに来てくれた事。
だから、キスされたことだって私はあんなに悲しかったのだ。何も思っていない人ならば、寝坊助の戯言だと一発殴って終わらせただろう。
私の気持ちを弄ばれた気がして、嫌だった。結論はそれだけだ。私は坂田さんのことが好きだから、慕っているから、こんなにも____
「……お登勢さん、こんばんは」
「あァ、美和かい!アンタ、もう体は平気なのかい?」
「ええ、元々大した怪我はしてませんから。ご心配かけてすみません、これお詫びに……」
お城からの帰り道、少し城下町に寄って最近話題のロールケーキを買ってきた。この前のお酒とお料理のお礼も含めたそれをカウンターにそっと置く。
「でもねェ、結局一番あんたのことを心配してたのは、銀時のやつだよ」
「……え」
「だから、これは銀時にでも渡してやんな。私はあんたに料理出しただけさね」
「すみません、私、坂田さんには___」
会えません。
そう続けようとした時だった。
「ババア、ちょっといーか」
ガラガラ、と戸が開く音がして、彼の声がした。
会いたい。会いたくない。その二つが鬩ぎ合い、私の心の蔵は高鳴る。
「よォ、美和」
やっぱり、私は、彼に恋をしている。
身も焦がれるような、熱くて切ない恋を。